お困りのことはございますか?
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CFRPについて
- CFRPとは何ですか?
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Carbon Fiber Reinforced Plastic(炭素繊維強化プラスチック)の略で、強化材としての炭素繊維(CF)とプラスチックを複合してできる素材です。
炭素繊維はとても強くて軽い素晴らしい素材ですが、炭素繊維のみで作られる製品はありません。プラスチックと炭素繊維がミクロにしっかり手をつなぐことで、「CFRP」という固まりとして能力を発揮します。
配置する炭素繊維(CF)の種類・位置・方向・長さ・量により性能が発現します。細い繊維の特性が性能を支配しますので基本的に「異方性材料」であることを認識することが大切です。
CFRPには“標準品”というものはありません。CFRPは適当な炭素繊維とプラスチックを選択し、その性能・機能を活かして目的に合うように設計して作りこみます。
CFRPは「軽くて強い」だけではなく、金属やプラスチック単体では絶対に得られない性能・機能を合わせ持たせることができる優れモノです。
- CFRPの特長は何ですか?
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CFRPは、「軽くて強い」以外に多くの素晴らしい性能・特長を持っています。
比剛性、低熱膨張、寸法安定性、耐候性、耐食性、振動減衰性、X線透過性、熱伝導性を、CFの品種・配向などを考慮することで希望に合う素材とすることができます。
- CFRP品の機械加工は金属品と異なりますか?
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一般的にCFRPは難削材と言われています。その理由は、CFの強度が非常に高く、繊維層が剥離しやすく加工効率をあげられないことと、工具寿命が短いからです。
良い加工精度と表面仕上げ品質を保つために超硬合金製またはダイヤモンドコーティングされた刃工具を使用します。
CFRP(GFRPも)機械加工では、金属加工で一般的に使用される切削油は使いません。CFRPは油分が浸透しやすく、しみ込んだ油分の除去ができないためです。表面に油がついていると接着剤を使って別の部品(CFRP、金属など)に接合ができなくなります。油が浸み込んでいますからサンディングや切削でCFRP表面を加工しても油が表面に出てくることになり接着強度を得られないのです。
ウオータージェット加工や、砥石研磨加工の場合、研磨剤として水が必要ですが、加工後は乾燥工程を考慮しなくてはなりません。一般的なCFRPは数パーセント吸湿しますので、高い精度要求に応えるためには、加工後十分に乾燥させてから寸法確認する必要があります。
- CFRP製品の寸法安定性は良い?
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優れた寸法安定性はその低熱膨張率(3ppm以下)によります。CF(炭素繊維)がマイナスの線膨張率(-0.4~-1.5ppm)で、母材となる樹脂がプラスの線膨張率(+30ppm以上)なので、繊維の種類と方向を設計することで、ゼロ熱膨張狙いも可能です。製品例:天体望遠鏡、検査用ジグフレームなど。
一般的なCFRP成形板状製品の場合、面外方向は炭素繊維が配向されていないので熱膨張率は樹脂レベルとなります。その対策としては、面外方向を拘束できるCFRP素材配置の組立構造とする方法があります。
弾性域内での繰り返し応力によるひずみも発生し難い優れた耐疲労特性を持っています。産業分野ではCFRP製板バネが代表例ですが、レジャー・スポーツ分野でも早期に釣り竿。テニスラケット、ゴルフシャフトなど、軽量化だけの目的ではなく、初期性能を保持し続けるメリットがあり採用されています。
- CFRP製品の強度はどの程度高いですか?
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製品に配置されるCF(炭素繊維)のグレード、方向、量、位置によって強度は大きく変化しますが、基本的に「鉄と同等以上(>600MPa)の強度がある」と言えます。ただし、ひとつの製品のなかにおいても方向により強度が異なる(異方性)ので、製品の要求仕様に見合ったCFの配置設計をする必要があります。(設計可能範囲:20~4000MPa)
いくつか例を紹介します。
①強度を1方向だけ高くしようとする場合(釣り竿):4000MPa(炭素鋼の5倍以上!)
②一般的な高強度織物(230GPaタイプ):CF(炭素繊維)0°/90°方向で650MPa
- CFRP製品の弾性率はどの程度ですか?
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製品に配置されるCF(炭素繊維)のグレード、方向、量、位置によって弾性率は大きく変化します。
ひとつの製品のなかにおいても方向により弾性率が異なる(異方性)ので、製品の要求仕様に見合ったCFの配置設計をする必要があります。(設計可能範囲:2~400GPa)
例を紹介します。
弾性率を1方向だけ高くしようとする場合(液晶パネル搬送用アーム):150~300GPa(長手方向)
ただし、短手方向は20~30GPaレベルと低いです。
- CFRP製品の振動挙動は金属と違う?
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CFRPは鉄・アルミと比べて密度が小さいので、高い比剛性(弾性率/密度)となり、固有振動数が高くなります。
一般的な弾性率のCF(高強度タイプ:230GPa)から超高弾性率CF(870GPa)も選ぶことができるので、同じ形状・寸法のCFRP部品でも、固有振動数は2倍以上の範囲で設計できます。
ということは、「共振周波数設計」ができるという特長を活かし、金属では難しい課題となっていますが、CFRP活用で共振防止・タクトタイム短縮・ 騒音防止など価値ある効果を作り出すことも可能です。
加えて、高弾性のCFと粘弾性の樹脂とのミクロな組み合わせのCFRPは、高弾性率であるにもかかわらず、優れた振動減衰性能を持っています。具体的な用途としては、液晶パネル搬送ハンドや、センサー部品があります。
- CFRP製品は熱を伝える?
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CF(炭素繊維)はそのグレードによって幅広い熱伝導率を示します。PAN系高強度グレードは10W・m/K以下と非常に低いですが、ピッチ系の超高弾性CFは銅をはるかに上回る800w・m/Kのグレードもあります。
CFRP製品はCFの種類・量・方向により熱伝導率を設計できます(2~300w・m/℃)が、繊維が向いていない方向、例えば積層と直角の方向は樹脂の熱伝導率になります。
熱源からの伝熱機構の考慮は必要ですが、異方性のある熱伝導性能を活かした構造も可能です。採用例:バッテリーケース
- CFRP(熱硬化性)の特徴は?
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成形に時間が掛かりますが、最先端の速硬化タイプのプリプレグの硬化時間は1分まで短縮可能になっています。機械的物性(剛性、強度)はCFRTP(熱可塑性)より剛性・強度は優れ、強度は汎用タイプでも鉄の倍以上も可能です。
塑性変形しないので、成形後に曲げることはできません。ひずみ限界を超えると破壊します。
結合・組立は溶接できないので接着かボルトアップで行います。CFRP同士の場合も、金属などの異種材料との場合も“接着”と“機械的結合”(ボルトアップ、リベットなど)の併用より確実な接合とすることができます。
耐熱温度は樹脂支配で、汎用エポキシは130℃、耐熱エポキシは180℃です。
リサイクル性は樹脂を取り除くのに手間、コストがかかりますので、あまりよくありません。
- CFRTP(熱可塑性)の特徴は?
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基本的に熱硬化性に比べて成形時間が短くできます。成形構造、寸法、マトリックスにより異なりますが、ほぼ3分以内で成形(賦形)完了することができます。
再成形(二次成形)が可能です。出来上がった製品(板、棒など)に再度熱と圧力をかけることにより、曲げたりすることができます。
樹脂との接着力が小さい(熱硬化性比)、大きな力が掛かると樹脂が伸びて、熱硬化CFRPと異なり、一瞬で破壊することなく延性的に破壊します。
熱融着できます。CFRTP同士の場合、短時間に熱融着が可能です。熱板、振動、超音波、抵抗、電磁誘導、レーザーなどの過熱プロセスにて接合することが可能です。異種素材(金属)との熱融着の研究開発も進められています。
リサイクルしやすいです。CFRTP製品の母材の樹脂を取り除かないで、再成形できるので、歩留りも高く、繊維を細かく切らなければ性能も大きく落とさず再利用が可能です。
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お見積もりについて
- CFRP製品の見積依頼はどのようにしたら良いでしょうか?
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「既存品のCFRP化」というご依頼
既存品の寸法・図面、改善したい項目(性能、仕様)と目標(レベル、値など)、将来の期待数量、見積数量をお教えください。
「新規製品開発」というご依頼
開発の目的・目標、構想マンガ・図面、達成したい項目(性能、仕様)と目標(レベル、値など)、将来の期待数量、見積数量をお教えください。
性能とコストの面でより合理的な製品の仕様(形状、製造法、積層など)も含めて、お見積り提案させて頂きます。
- どんな形状の製品もCFRPで作れますか?
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基本的にどんな形状でも作れます。
シート状の薄いもので厚さ0.1mm、厚いものではどんなに厚くても。形状については、CFRPは加熱して粘度を低くしたプラスチックの母材にCF(炭素繊維)を含侵させて作るので、必ずある圧力を保つための型が必要です。製品の形状と表面の質、そして成形プロセスの種類により、片側だけの場合と上・下(内・外)の型を使用します。
複数の成形品を機械加工・接合すれば何でも作れます。金属加工品との接合も可能です。ただし、それなりのコストがかかります。
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複合材について
- CFRPとFRPの違いは?
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CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics →炭素繊維強化プラスチック
FRP=Fiber Reinforced Plastics→繊維強化プラスチック
また、FRP(通称)= Glass Fiber Reinforced Plastics (GFRP) →ガラス繊維強化プラスチック
CFRPは、炭素繊維(CF)の種類・配向・含有率と樹脂の種類により、大きく異なった物性となるので、基本的に「材料設計」というプロセスを伴います。
FRP(=GFRP)は、強化材がガラス繊維である素材で、織物タイプが一般的です。
- CFRPとCFRTPの違いは?
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両方とも強化繊維はCF(炭素繊維)ですが、マトリックス(母材)が異なります。
一般的に熱硬化性樹脂マトリックス品は「CFRP」、熱可塑性マトリックス品は「CFRTP」と称されています。
①CFRP:熱硬化性樹脂
エポキシ、ポリエステル、フェノール、熱硬化性ポリイミドなどがあります。樹脂によってCFRP特性が変わります。エポキシマトリックスのCFRPは、力学的物性が高く、広範囲の用途に採用されています。
②CFRTP:熱可塑性樹脂
ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の製品などの開発が進められています。
- 炭素繊維(CF)の「PAN系」と「ピッチ系」とは?
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PAN系CF:原料はポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、略称「PAN」
1000℃以上で焼かれて炭素繊維となり、2000℃以上で焼かれたより高弾性率品は黒鉛繊維と呼ばれることもあります。非常に高い強度(構造用鉄鋼の10倍)が特長ですが、400GPa以上の高弾性率品種は強度が低下傾向となります。
ピッチ系CF:原料は石炭ピッチの精製・重合品
機械的物性の低い等方性CFと、それなりに高い機械的物性、特に高い弾性率が特長の高機能CFに分別される。高機能ピッチ系CFは2500℃以上の超高温での焼成でも強度が低下しません。