- 開発秘話
ドローン筐体 CFRP製モノコック構造開発秘話(三)
製造上での困難
型の分割や製造プロセスは概ね設計で固まりましたが、実際に製造してみると問題は山積みでした。
成形作業に時間をかければある程度の製品は作れますが、そこは「工芸品」ではなく「工業製品」であるが故に、予算工数以下で製造する必要があります。
部品の製造を進める上で困難だったのが、ドローン筐体の上下分割位置の接着――上下の筐体を別々に成形・硬化したものを接着剤で上下を接着する作業でした。その接着部の合わせに工数がかかってしまいます。更には合わせ部の段差が目立ち、塗装しない筐体で接着部の段差は外観上でNGとなってしまいます。求められるのは成形と接着のスキルでした。
当社の技量認定制度は5段階有り、知識と技能を毎年評価してレベル分けされています。1〜2は未経験から経験の浅い補助作業者、レベル3から認定者となり、一人作業が認められています。レベル4〜5は作業のみならず、手順書の作成や後進の指導・教育、技能認定試験の問題作成が認められている技能者です。更にマイスター制度も有り、レベル5以上のスキルを持った者に与えられています。
今回の成形・接着技量としてはレベル4〜5に該当する作業でしたが、その技能レベルの作業者でも最初から良品を作る事が出来ない難しさでした。
チームの強さ
今回抜擢されたプロジェクトリーダーMは設計者側の思考だけでなく、製造側の思考を理解してプロジェクトを進行して来た事で、設計側と製造側を上手く橋渡しした事によりチームが一丸となりました。
製造側からは「こんな型では成形出来ない」や「この形状ではこの繊維配向の成形は出来ない」などの反発を受けましたが、Mも設計だけの技能だけでなく、成形技能も持ち合わせている事で、その声を受け止めつつ成り立つ解を根気よく製造側に伝える日々が続きました。
型の改修や新たな治具製作、形状や作業方法の見直し等が必要になりますが、一丸となったプロジェクトは強いです。現場からのアイデアも数多く上がって来て、手順書へ反映させながら製造作業は一気に完成へ向けて進められました。